SSブログ

【過去記事】2004年 蛭ヶ岳 [山関連]

当時HPに載せていたものの転載になります。
登山コースや道路状況は当時のものですので、現状とは異なる場合があります。
ご了承ください。

目的地:檜洞丸・蛭ヶ岳(神奈川県)
行動日:2004年 3月 17日(水)
天気:晴れのち曇り
コースタイム/コース:
 神之川ヒュッテ 06:00
 熊笹ノ峰 8:15/尾根縦走
 檜洞丸 9:00/尾根縦走
 臼ヶ岳 11:00/尾根縦走
 蛭ヶ岳 12:35/尾根縦走
 姫次 14:25/東海自然道
 風巻ノ頭 15:45/東海自然道
 神之川ヒュッテ 17:30
04031732.jpg
蛭ヶ岳(1672.7m)/臼ヶ岳方面より
map.jpg
今回は…自分に試練を与えてみようと思った。
ガイドブックや地図にも、檜洞丸~蛭ヶ岳の区間はハードコースであり、体力が必要とされている。単純計算で、9時間以上歩き続けなくてはならないコース設定だ。
要所に谷に下りるエスケープルートはあるようだが、あくまで狙いは尾根縦走による周回コースだ。
山と高原地図28「丹沢」(昭文社)より

日が延びたとはいえ10時間近く歩くわけだから、6:00頃には歩き出さなければならない。
神ノ川ヒュッテ方面へは国道413号線を西へ進み、途中細い林道を川沿いに南下して行く。
1時間半はかかるとみて、4:30頃家を出た。
宮ヶ瀬湖辺りから413号線に抜け、人気のない道を進む。
途中、神ノ川キャンプ場の案内が出ている細い道を左折し、山沿いの細い林道を奥へ奥へと車を走らせる。
すでに空は明るい上、道の舗装もきれいなので、何事もなく5:40には神ノ川ヒュッテ付近日陰沢橋に到着した。
04031701.jpg
当然の事ながら・・・誰もいない。ゲート手前に公衆トイレがある。
ヒュッテは犬越路方面にちょっと奥まったところにある。
朝食におにぎりを一つ頬張ると、さっさと準備を始める。
今回、軽量化の為(笑)ザックの上部気室の内張(カメラを収納するウレタン)を取り去り、撮影機材はEOS-7+28-105mmレンズ、フィルタ、レリーズのみザックに放り込み、水分はサプリ系500ml×2本、水500ml×1本と、歩行時間の割りには少なめとした。
望遠レンズ1本と水を多少減らしただけで、感覚的にザックは軽く感じられる。
気が焦っているのか…ストックを車に忘れたことに気づき、慌てて戻る。
04031702.jpg
6:00、改めてゲートをくぐり、舗装された林道(一部未舗装区間有)をぶらぶらと歩く。
空はすっかり明るくなっており、山間に日差しが入ってくる。
15分ほど林道を歩くと、右手山側に登山道入り口が見えてきた。
04031705.jpg
熊笹ノ峰へ続く登山道だ。
レキ混じりの登山道を登っていくと、大室山に日差しが入っていくのが見える。
数カット撮影し、杉林を登る。
04031708.jpg
途中、ヒノキ林~モミ・ブナと植生が変っていくのを楽しみながら、一歩一歩進む。
日当たりが良いが、時折風が吹き抜ける。
ぐちゃぐちゃの泥道を這いずるようにして登っていくと…尾根に出た。
04031712.jpg
8:15 熊笹ノ峰付近到着。尾根に出ると、南から強風が吹き付ける。
それも半端じゃないレベルだ…。
5分ほど休憩し、防寒具代りのカッパを羽織り、尾根道を東へ向かう。
天候は一転して雲の中だが、下界は晴れているようだ。 
遠く、檜洞丸の山頂は雲の中に隠れていて見えない。
今回、飲料水の制限もあったのだが…代りに持ち込んだゼリー食品は大いに有効だった。
歩行しながら栄養摂取と、のどの渇きにも対応できる。
所々ガレ場・鎖場があり風にあおられるが、恐怖を押し殺して進む。
いつぞやの丹沢山~蛭ヶ岳縦走の時のように、雲が尾根を流れていく…。
途中、泥道で転倒しかけ手をつき、左手が泥ドロ…(T.T)
04031718.jpg
9:00 檜洞丸到着…山頂は真っ白だった。
風も吹き抜け、長い時間休憩するには不向きな状況。
テーブルに寝っ転がり、体力の回復を図ろうとしたら、大粒の雨が落ちてくる。
時間的にはここまでオンスケジュールなので、タバコをふかして地図を見返す。
およそ10分ほど休憩し、檜洞丸をあとにした。
休憩に割り当てられている時間はトータル1時間のみなので、早めに進む。
04031719.jpg
山頂から10数m下ると…青ヶ岳山荘が現れる。
青ヶ岳山荘は白い雲の中、青い建物がボ~っと浮かび上がっていた。
平日は休業のはずだし…そのまま通り過ぎる。
緊急避難が出来るようにカギはかけられていないと聞くが、宿泊利用したらその旨届け出て、料金も振り込まなければならない。
さあ、ここから…過酷なステージの始まりだ。
横殴りの強風の中、黙々と歩を進める。
時折、ゼリー食品やカロリーメイトなどを摂取しながらの行軍だ。
04031725.jpg
9:50 金山谷乗越を通過する。このポイントもオンスケジュールで通過。
谷間のポイントだが…神ノ川方面に下りるルートは、かなり細く勾配もありそう。
04031728.jpg
10:25 神ノ川乗越を通過する。下りは泥で滑り、5分遅れとなってしまった。
持っていた地図には水場があるように記載されていたが、結局水場も発見出来ず…。
もう少しユーシン沢の方に下りた辺りにあるのか?ちょっとリスクがありそうな感じだ…。
04031730.jpg
11:00 臼ヶ岳到着。小休憩とする。
休憩しながら地図を見ていた時、神ノ川乗越~臼ヶ岳の時間を勘違いして計算していた事に気づいた…(汗)予定通りと考えていたが、泥道に手間取り、15分余計にかかっていることに…。
そそくさと蛭ヶ岳を目指すことにした…。
04031734.jpg
目の前に立ち塞がる、ミカゲ沢ノ頭(1421m)の向こうに蛭ヶ岳があるらしい…。
先は…真っ白で、その向こうに何があるのかわからない。
とりあえず…あのピークを越えなければ…と、気持ちは焦る。
せき立てられるように登ったミカゲ沢ノ頭だが…惜しげもなく一気に下る。
04031736.jpg
ようやく蛭ヶ岳に取り付いた。再び、ガレ場・鎖場と続く。
蛭ヶ岳直下は険しい登りが続く。
強風をもろに受けながら、いやになるくらいの傾斜を登る。
ガレ場を過ぎると、半壊した階段が続く。
道は凍っている所もあるものの、大半がぐちゃぐちゃの泥道。
泥の中に靴がはまり…何度と無く悪態をつきながら、山頂を目指す。
背の低い笹原の急勾配をヒーヒー言いながら登ること10数分…それまで白い雲にとけ込んでいた山頂が、ようやく見えるような近さになって来た。
04031740.jpg
12:35 蛭ヶ岳到着…さすがに、誰もいない。
いちめんの白い世界に見覚えのある風景が広がる。
吹きっさらしの中、テーブルに荷物を下ろすと寝っ転がった。
13:00まで余裕があるが、この状況下では火をおこすこともままならない上、ここにいるだけで体力を消費しそうだ。
10分ほど考えたが…温かい昼食は諦め、カロリーメイトをくわえると、ザックを担いで姫次方面へ下ることにした。
04031741.jpg
白いもやの中、土のうが積まれた階段を下る。
ミゾレ混じりの雨が、ポツポツとカッパに当たる。
風は強いが、先ほどの尾根ほどではないので寒いとは感じない。
階段を少し下りた時だ…犬の吠える声が近づいてきた。
振り返ると、ボクサー系の茶色短毛の中型犬だ。目や鼻の周りが黒っぽい。
自分の方に向かって吠えてくる???
何が言いたいのか良くわからないけど…鑑札もつけているし、熊除けのベルもついている。
前に見た蛭ヶ岳山荘の犬とは、違う犬だし…いや、別にいるのかな…???
何だかわからないけど…吠え立ててくる…天候悪いから行くなって言っているのだろうか?
そんな~強引な…???天候回復まで待っていたら、今日明日には下山できないじゃん。
ひたすら無視して下りていたが、そのまま数十m吠えながらついてくる。
急勾配の階段を下りきった頃、諦めたのか戻っていった。
何だったのだろう???
帰宅してから気が付いたのだが…もしかして、登山者の連れていた犬で、飼い主が動けない状態に陥ってしまったのではないだろうか…?
そういう可能性もあり得た訳だ…何故気が付かなかったのだろう…。
今日は、まだ誰にも会っていない。
こんな日に動けなくなってしまったら、他の人に見つけてもらえる可能性は低い。
この考えが間違っていれば良いのだが…。
(その後、新聞記事に注目していたが、該当する記事はなかった。とりあえず誰も遭難していないのか?)
04031743.jpg
当時はそんなことは思いもせず、ひたすら続く木道を下っていった。
先を急がなければならない…という意志だけが、自分を動かす。
04031747.jpg
蛭ヶ岳から続く急勾配を下ると、しばらくは高低差は少なくなる。
だらだらと続く泥道に足を取られないようにしながら慎重に歩く…その時だ。
黒い霧(雲)を見た・・・。
そう思った。
まるで映画の特殊効果を見ているようだった。
黒い霧が、左から向かってくる…。
本能的な恐怖が背筋を走った。
それは目の前を通り過ぎ、右手の谷の方へ流れていった。
いったい何だったのだろうか?
その疑問は、すぐ解けた。
今までずっと雲の中で、流れる白い雲の中にいた。
黒い霧の正体は…白い雲のない部分だったのだ。
白い雲の明るさになれてしまっていた目が、それが無いところを黒い闇のように認識してしまったのだ。
ほっと安堵するとともに…自分の臆病さを心の中で笑う。
04031748.jpg
13:45 地蔵平を通過する。
姫次までの道のりは単調な行程だ。
周りは木々で囲まれ、ただでさえ景色が見えないのに、この天候で足を止める気も起こらない…。
緑あふれる季節なら、また違った見方が出来るのだろうが。
04031750.jpg
14:00 原小屋平到着。突然、芝生敷きのような広場に出た。
持っていた地図には水場が記載されていたので、念の為捜索してみる。
手持ちの水は通常に比べれば少ない量だった為、補給できるのならばしておこうと考えていた。
すでに神ノ川乗越付近の水場はLostしていたし、サプリ系は残り2/3を切っていた。
幸い、この天候により、湯を沸かすことはなかったので、水をまわすことは可能だ。
結局、案内板は見つけたが…ちょっと離れたところのようで、すんなり諦めて、姫次へ向かう。
ワダチの登山路は滑りやすく、何度も足をとられる。
ストックがないと、ひっくり返っているところだ。
やがて、カラマツの林が目立つようになってきた頃、後方に人の気配を感じる。
ふと振り返ると、おじさんが見えた。
どうやら複数らしく、後ろを気にしつつ…ついてくる。
姫次のちょい手前、最後の登りを一気に登る(やはり、対抗意識があるんだなあ)
04031751.jpg
14:25 姫次到着。カラマツに囲まれた広場が現れた。
テーブルにザックを下ろし、足を投げ出す。
2~3分して、後続のグループが来た。
6~8人のおじさん・おばさんグループだが、結構若い方だ。
グループの方々は写真を撮ったりと元気そうだが、こちらは…ちょっとグッタリ(笑)
防寒具代わりに着ていた雨具を脱いでザックにくくりつけると、「お先に~」と神ノ川方面に進む。
ここからは、東海自然歩道となる。
あと…ふた山越えれば、今回の挑戦は成功だ。
そういう思いが、足を突き動かす。
姫次から一旦下り、袖平山に取り付く。
どうやら、後続グループはそのまま東海自然歩道を北に抜けたようだ。
追われている気配もない…また、孤独な戦いが続くわけだ(笑)
04031753.jpg
14:40 袖平山を通過する。
ひたすら登り、ちょっと視界が開けた所に出ると道標とテーブルが見えた。
袖平山の山頂は、そこから少し上がった所らしい。
さすがに、この先2時間は歩くことになるので、日没も考慮してここは通過することにした。
この頃は…下りでは右ヒザが辛く、ストック頼みの状態だったのだが…そのまま下りに入る。
東海自然歩道に入ってから、進路を西に向けた途端、再び尾根を渡る強風にあおられる。
04031754.jpg
所々地面も乾いており土埃が舞い、目に入る。
コンタクト使用の身としては…地獄のようだ。
涙ボロボロで悪態をつきながら、極めて悪い視界の中で足元を確かめつつ進む。
小レキ混じりのクネクネした登山路が谷間に伸びている。
不用意に足を置くと、足が滑って怖い思いをする。
傾斜が結構きついので、転がったら…あちこちぶつけながら下の方まで行ってしまいそうだ。
少々顔をしかめながらも…ようやく泣きの下りが終わり、再び登りだ。
次の経過地点である風巻ノ頭には避難小屋がある。
犬越路の小屋ほど良さそうなものではないかもしれないが、風除けさえあればHappyだ。
そこまで行くには、多少起伏があるのが地図より伺える。
案の定上り下りの繰り返しで、その都度ストックの長さを調整して、登り用(ちょい短め)・下り用(ちょい長め)にする。
その最中…右のストックにアクシデント発生!?
2段階に伸縮するシャフトのうち、グリップ側のシャフトが固定出来なくなってしまった。
石突き側を伸ばして、何とか登り用にマッチするサイズだが、下りではちょっと短い。
ちょっと立ち止まって、ロックねじを回してみたが…フリー状態。
やむを得ず、その状態で下る。
右ヒザの痛みは増してくる。
根性で歩みを進め、いくつか丘を通り越すと風巻ノ頭に取り付く。
登りは、それほど負担にはならない。
ストックを頼りに一気に登ると、小屋が見えてきた。
04031758.jpg
15:45 風巻ノ頭避難小屋に到着。
やはり犬越路ほどのものではないが、少しは風除けになるし足も投げ出せる。
ザックを下ろし、残っていたおにぎりを取り出すと、口に詰め込み水で流し込んだ。
湯を沸かす余裕もないので、水は飲用とする。
久々にタバコに火をつけた…今回、2本目だ。
最近では休憩の度に吸っていたことを考えると、いかにハードなのか身にしみて感じる。
04031759.jpg
小屋の周りでうなる風の音を聞きながら(だから風巻ノ頭なのかな)ボ~っとたたずむ。
ここから…あと1時間半くらいか…?
地図を見ながら、漠然と今回の山行を考える。
自分の限界への挑戦以外の何ものでもなかった。
自然がどうこうとか、写真を撮ることとか、森に融けようとか…そんなきれい事はなかった。
ただ、自分のプライドをかけて、組み立てたルートを攻略する…それだけだ。
今まで安全を優先して、1日で歩くルートを組み立てたり、途中予定変更してエスケープしたりしていた。
それは大事で、勇気あることだとはわかっていても、今回だけはエスケープしたくなかった。
自分の根性や体力を信じてみたかった。
それに、すでに…エスケープ出来ない地点まで来ている。
あとは、この山を下りるだけだ。
16:10に風巻ノ頭避難小屋から出発する。
再び、防寒具代りの雨具を羽織る。
風除けになっていいのだが、安物のカッパの為、内側が汗で濡れている。
袖を通す際、気持ち悪かったが…動き出すと問題なかった。
再びクネクネの小レキ登山道を下る。
避難小屋でストックをいじってみたが、状況に変化は無く、右ストックは短いままだ。
ただ、ただ…自分の足を置く位置を注意しながら、一歩一歩下る。
どれだけ時間が経ったのだろう…。
右手側に川や林道が見えてきた。
あと100~200mは高度を下げなければならない。
再び歩くことのみに、意識を集中する。
やがて、正面に河原や林道が見えてきた。
しばらく続く、階段を下りれば…神ノ川公園橋だ。
ヒザに力が入らず、前向きでは下りづらい。
意表をついて、後ろ向きで階段を下りる。
思いのほか、足への負担は軽い。
しかしながら…視界が悪いし…みっともなさそう…(笑)
04031762.jpg
17:15 神ノ川公園橋に到着。
平地では足の痛みは感じない。
代りにザックのハーネスが、肩に食い込んでちょっち痛い。
ザックのウェストベルトや、チェストベルトを外し、カッパとフリースのファスナーを開けて、はたから見ると…結構だらしない格好(笑)で林道をフラフラと歩く。
手先は冷たいが、冷たい風が首元にからみついて涼しい。
そのまま、15分ほど歩いてゲートに到着した。
よ~っし!ゴールだ。
17:30 車に到着。
こうして、試練の山行は静かに幕を閉じたのだった。
6:00より歩き出して、17:30…途中休憩時間をさっぴいても、10時間20分ほど歩いていたことになる。
幸い、右ヒザの痛みはすぐに消え、足にもマメすらなかった。
この1年ちょっとで、ずいぶんと鍛えられたものだ。
久々に自信が得られた気がする。
…そうそう、ストックの件だが、家に帰って一度分解してみたら…何故か直ってしまった…あれれ???

今回の教訓)
・ゼリー、カロリーメイト等の携行食糧は効率が良いなあ。
・丹沢では、あまり水場は、あてにしない方がいいかな…結構離れた位置にありそうだし~。
・荷物の選定は、その重量差がわずかでも…効果は抜群。
・ヤッケは、ちゃんとした通気性のあるものを買おう(笑)
・ザックに関して言えば、三脚はセンターで固定出来るものの方が良い → あちこちぶつけて、雲台が傷だらけだ~。





nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 0

コメント 0